同じ塩分でも血圧が上がりやすい?「食塩感受性」と高血圧のはなし
「人に比べて、塩分でむくみやすい・血圧が上がりやすい気がする」と感じたことはありませんか。実は、同じ量の塩分をとっても、血圧の上がりやすさには人によって差があることが知られています。この、塩分の影響の出やすさを「食塩感受性(しょくえんかんじゅせい)」と呼びます。今回は、この食塩感受性と減塩について、できるだけわかりやすくお伝えします。
同じ塩分でも、血圧の上がり方は人それぞれ
塩分(ナトリウム)は、体の中の水分の量を調整しています。塩分をとりすぎると体に水分をためこみやすくなり、血液の量が増えて血圧が上がります。ただ、その「上がりやすさ」は一人ひとり違います。塩分の影響を受けやすい状態の方を、医学的に「食塩感受性が高い」と表現します。

塩分の影響の出やすさは、体の状態によって変わります
食塩感受性には、生まれ持った体質も少し関わっています。ただ、それだけで決まっているわけではなく、そのときどきの体の状態によっても変わっていくことがわかってきました。塩分は最終的に腎臓から尿として外に出されますが、この「塩分を外に出す力」は、次のような体の都合で少しずつ変化します。いずれも、自分の心がけや努力でどうこうできるものではありません。
- 加齢:年齢を重ねると、腎臓の働きは誰でも自然と変化していきます。
- 腎臓の働き:腎機能が下がってくると、塩分の影響が血圧に出やすくなります。
- 体質(生まれ持った要因):日本人は、塩分の影響を受けやすい体質の方が比較的多いと言われています。
- 肥満や糖尿病など:これらがあると、食塩感受性が高まりやすいことが知られています。これらもまた、体質などさまざまな要因が重なって起こるものです。

食塩感受性が高くなるのは、意志の強さや弱さの問題ではありません。ですから、「これまでの自分が悪かった」とご自身を責める必要はまったくありません。大切なのは、「自分は今、塩分の影響を受けやすい時期かもしれない」と知っておくこと。それが分かれば、減塩という”打てる手”を、自分の意思で選べるようになります。
だからこそ、減塩は誰にとっても意味があります
食塩感受性が高くなるのは特別なことではなく、年齢や体の状態によって、誰にでも起こりうることです。裏を返せば、減塩はどなたにとっても意味のある取り組みであり、とくに腎臓の働きが気になる方、年齢を重ねた方、糖尿病・肥満のある方では、減塩が血圧に与える影響が大きいと考えられます。「これまで大丈夫だったから」ではなく、体の状態は少しずつ変わっていくもの。そう知っておくだけで、減塩がぐっと前向きな選択になります。
夜の血圧との関係
塩分の影響を受けやすい状態のとき、体は日中に出しきれなかった塩分を、夜のあいだに排出しようとして血圧を高めに保つことがあります。本来、血圧は夜眠っているあいだに下がるものですが、こうした場合は夜間の血圧が十分に下がらないことがあります(この状態は「ノンディッパー」とも呼ばれます)。夜間の血圧が下がりにくいことは、心臓や血管への負担という観点から注目されています。
夜の血圧そのものはご自宅では測りにくいのですが、朝と夜(晩)にご家庭で血圧を測っていただく「家庭血圧」は、血圧の一日の動きを知る大切な手がかりになります。高血圧の診療では、診察室の血圧だけでなく家庭血圧を重視することが、高血圧治療ガイドラインでもすすめられています。すでに測っておられる方は、ぜひ記録を診察の際にお持ちください。
まず、今の塩分量を知ることから
減塩というと「あれもこれも我慢」と身構えてしまいがちですが、最初の一歩は「自分が今どれくらい塩分をとっているか」を知ることです。当院では、高血圧で初めて来られた方に「塩分チェックシート」を使って、ふだんの食事から塩分のとり方のクセを一緒に確認しています。質問に答えていくだけで、自分のどこに塩分が多いのかが見えてきます。「自分の場合はここを変えればいい」と分かると、減塩はぐっと取り組みやすくなります。
コラム:塩分は「測る」こともできます
塩分のとり方は、これまで食事の聞き取りやチェックシートで「推測」するのが中心でした。近年は、尿に含まれるナトリウム(塩分)とカリウムのバランス(尿Na/K比)を調べることで、塩分のとりすぎや野菜・果物の不足の傾向を、より客観的に知る方法が注目されています。健診や医療機関で、比較的かんたんに調べられるのが利点です。この比は低いほど、塩分が控えめでカリウムがとれている目安とされます。
ただし、この測定だけで血圧が下がると決まったわけではなく、あくまで「自分の食事のクセを知る手がかり」のひとつです。それでも、数字で見えると、減塩への一歩を踏み出しやすくなります。
無理なく続ける、減塩のヒント
高血圧治療ガイドラインでは、減塩の目安は1日6g未満とされています。とはいえ、いきなり厳しくする必要はありません。続けられることが何より大切です。
- めん類の汁は残す(ラーメン・うどん・そばのスープは塩分が多めです)。
- しょうゆ・ソースは「かける」より「つける」。小皿に出すと使う量が見えます。
- だし・酸味(酢・レモン)・香り(薬味・こしょう・香味野菜)で、塩分は控えめでも満足感を。
- 加工食品・練り物・漬物・汁物は塩分が多めなので、量や回数を意識する。
- 野菜・果物に多く含まれるカリウムは、塩分(ナトリウム)を外に出す働きを助けます。ただし腎臓の働きが低下している方はカリウムを控えたほうがよい場合があるため、自己判断せず、通院中の方は主治医にご相談ください。
血圧は、減塩や生活習慣の見直しで改善することがあります。それでも血圧が高い場合には、お薬による治療を検討することもあります。どの程度の減塩が必要か、お薬が必要かは、お一人おひとりの状態によって異なりますので、気になる方はご相談ください。
循環器を専門とする医師が診ます
当院院長(泊咲江)は、循環器専門医・総合内科専門医です。血圧そのものだけでなく、その先にある心臓や血管の状態まで含めて診られるのが特徴です。家庭血圧で「朝が高い」「下がりにくい」と感じる方、健診で血圧を指摘された方も、どうぞお気軽にご相談ください。
【参考】高血圧管理・治療ガイドライン2025(日本高血圧学会)/エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン(日本腎臓学会)/食塩感受性高血圧に関する大学・学会の研究
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ご予約・お問い合わせ
診療は予約制です。WEB予約、またはお電話にて、ご予約のうえご来院ください。健診結果や血圧手帳をお持ちいただくと、よりスムーズです。

