目次

1.心筋炎とは

2.心筋炎の症状

3.心筋炎の診断

4.心筋炎の治療

1.心筋炎とは

心臓は筋肉(心筋)からできており、体に血液をおくるポンプの役割をしています。

心筋炎は、心筋に炎症がおきる疾患です。心筋細胞が障害を受け、心筋の動きが悪くなったり、致死性の不整脈が生じることがあり、重症の場合は突然死することがあります。

炎症の原因は、感染(ウイルス・細菌など)、化学物質(薬剤・ワクチンなど)、放射線、過敏性反応、全身性疾患(膠原病・サルコイドーシスなど)など多岐にわたります。急激に発症する「急性心筋炎」の多くは、ウイルス感染ですが、ここ数年はワクチンによる心筋炎も問題になっています。

2.心筋炎の症状

前胸部痛

心筋炎の32~95%の方でおこると報告されています。かぜ症状のあと1~4週間くらいでおこることが多いです。ワクチンによる心筋炎の場合は、ワクチン接種後1週間以内におこることが多いと報告されています。

心不全による症状

倦怠感・呼吸困難・食欲低下・むくみなどの心不全による症状は、心筋炎の19~72%の方でおこると報告されています。

不整脈による症状

動悸・失神は6~25%と報告されています。原因不明の突然死方を解剖した結果、6~14%で心筋炎が認められたとする報告があります。

その他

炎症による発熱や頻脈が認められることが多いですが、不整脈で脈がゆっくりになることもあります。

3.心筋炎の診断

身体所見(診察所見)

感染を反映する所見:発熱・頻脈

心不全を反映する所見:胸部奔馬調律、胸部ラ音、むくみ

不整脈を反映する所見:脈の異常

十二誘導心電図

心筋の障害を示す所見が認められます(異常Q波、R波減高、幅広QRS波、低電位など)。

あらゆる種類の不整脈が認められます。

心臓超音波検査

心筋の炎症を反映し、心筋の壁肥厚(むくみ)、心筋の動きが低下、心膜液貯留(心筋の周りに水がたまる)などが認められます。

採血

心筋障害マーカー(心筋トロポニン、クレアチンキナーゼ、AST、LDHなど)が上昇します。

当院での検査

当院では、循環器専門医である院長が診察し、症状から心筋炎が疑われる場合は、即座に心電図・心臓超音波検査・心筋マーカー採血(トロポニンT)を実施し、その場で診断が可能です。

4.心筋炎の治療

原因に対する治療、心不全の治療、不整脈の治療を同時に行います。

心臓突然死の危険があるため、心筋炎と診断した場合は原則治療可能な病院へ依頼します。

出典:日本循環器学会 2023年版 心筋炎の診断・治療に関するガイドライン